三びきのこぶた-リアルな人物像
『三びきのこぶた』の絵本は数多くありますが、瀬田貞二訳、山田三郎画の福音館書店の絵本は、イギリス民衆の生活の厳しい現実が反映しています。
三びきのこぶたが、家を出ることになったのは、こんなわけでした。
おかあさんぶたは びんぼうで、こどもたちを そだてきれなくなって、じぶんで くらして いくように、三びきを よそにだしました。
生活の貧しさという現実をここに見ることができます。
そして、この後どうなるかは、みなさんよくご存知のことと思います。
ところで、三番目のこぶたのことですが、れんがの家を建てて、おおかみを追い払う、かしこいこぶたのイメージがつよい人物ですが、こんな場面もあります。
「ねえ、こぶたくん。おれは、とても いい かぶばたけの あるところ、しってるぞ」
「どこだい」
「ごんべさんの うらだよ。よかったら、あしたの あさ、さそいにくるよ。いっしょに とりに いこうよ」
「よしきた、ぼくも いくよ。・・・」
ごんべさんの作っているかぶを盗みにでかけるおおかみとこぶたです。なんと、ふてぶてしい人物たちでしょう。
そして、おおかみと6時に起きて、かぶを盗みにいく約束をしますが、こぶたは、先回りして、おおかみをだしぬく、ずるさももっています。
今度は、りんごの木のあるところを知ってるぞ、とおおかみは誘います。
5時のところを、今度は4時に出かけ、出し抜こうとしますが、りんごの木に登ってるうちに、おおかみがやってきてしまいます。
この危機を、こぶたはどのように乗りこえるのでしょうか。
りんごをひとつ遠くにほうり、おおかみがひろいにいってる間に、「いそいで にげかえりました。」 機転をきかせたアイディアで、この危機をのりこえます。
最後は、おまつりの場面ですが、ここでも、「ばたーつくりの たる」に隠れて、おおかみから難を逃れるのです。
このように、厚みのあるリアルな人物像が描かれています。
えんとつからおりてきたおおかみは、最後には、なべのなかに、どぼんとおちてしまいました。
そこで こぶたは、すぐさま さっと、ふたを かぶせ、おおかみを ことことにて、ばんごはんに たべてしまいました。
それからさき こぶたは ずっと しあわせに くらしました。
この結末を子どもたちはどのように評価するのでしょうか。