ふるはしかずおの 絵本ブログ

絵本をちょっと身近に。

オノマトペの絵本-ものごとの本質を感覚的につかむ

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 谷川俊太郎文、なかのまさたか絵(福音館書店)は、擬態語や擬音語でできている絵本です。

 さらさら/ぺたぺた/ぴしょぴょ/こ゜くんこ゜くん/ぎゅうぎゅう/ぽき/くしゅくしゃ/ぺとぺと/つるごつん/ふわふわ

 「さらさら」「べたべた」「びしょびしょ」「ごくんごくん」といった言葉から、わたしたちはある情景、状態、動きを思い描くことができますが、絵本はどのような絵をつけているのでしょうか。これらの言葉は、ストーリーらしいものを語っていませんが、絵本の絵は、公園で遊んでいるおんなのこが、雨に降られて、「びしょびしょ」になって、家に帰り、絵を描き、お風呂にはいって眠るまでの1日をしっかりと物語っています。

 絵本や紙芝居にこれらの感覚的な言葉が多く使われていることは、ご存知のことと思います。これらを総称して、オノマトぺ(声喩)といいます。

 オノマトペは、ものごとの様子を感覚的に写しとったり、ものの音、音声などをまねて作った言葉ですから、音声によるたとえです。

 谷川俊太郎さんは、オノマトペを「おとまねことば、ありさまことば」と呼んでいます。

 日本語は、このオノマトペのたいへん多い言語です。あまりに多すぎて、普通の辞書には入りきらないので。『擬音語,擬態語辞典』(角川書店)という特別な辞書があるほどです。

 子どもの言語体験におけるオノマトペの意味について、松居直さんは「こうした音声の豊かさを伴った言葉が、言葉に対する乳幼児の耳の感覚や語感を養うのではないだろうか」(『絵本の時代に』)といわれています。

 また、これを違った角度から、谷川俊太郎さんは次のように語っています。

 それら(オノマトペのこと)によって、幼いころから、物の質感や働き、鳥獣の鳴き声、人間の心理などに対する繊細な感覚を育てることは、大切なことだとと思います。

 たとえば、笑いの表現ひとつをとっても、〈にたり〉〈にんまり〉〈にっこり〉は、それぞれ笑う人間の内心のちがいを見事にひきだしています。

 

 言い換えますと、〈にたり〉〈にんまり〉〈にっこり〉とわらう人物の内心の違いを、わたしたちは理屈ぬきで理解できます。これらのオノマトペは、このように笑う人物の本質をずばりとつかみ出しているのです。

 対象をつかみだすオノマトの力は、ものごとや「人間の心理などに対する繊細な感覚」を子どもたちの中に育てることになります。

 池上嘉彦さんの『ふしぎなことば ことばのふしぎ』によりますと、エチオピア語に「レメレメ」という言葉があるそうです。草木が青々としげっている様子をあわわすオノマトペですが、わたしたちは、この言葉から,それを連想するのはまった不可能なことです。エチオピアの人たちは、この「レメレメ」から、草木の青々とした感じをリアルにイメージしているのでしょう。

 このようなことから考えますと、オノマトペは、ものこ゜と人間に対する繊細な感覚を育てるだけでなく、日本人としての感覚ものの見方を養うものだと思います。