ふるはしかずおの 絵本ブログ

絵本をちょっと身近に。

『てぶくろ』-みんなでつくる社会を象徴

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  『てぶくろ』は、絵本の絵のあり方について教えてくれる傑作です。

  ご存知のように、『てぶくろ』のおはなしは、おじいさんが落としたてぶくろを使って、くいしんぼねずみ、ぴょんぴょんがえる、はやあしうさぎ、おしゃれぎつね、はいいろおおかみ、きばもちいのしし、のっそりぐまが、生活をともにするというものです。

 てぶくろの家に出会うまで、これらの人物たちは、森の中で、ばらばらにくらしていました。でも、いま、てぶくろの家をつくり、いっしょに暮らし始めるのです。

 

 絵本の絵は、てぶくろが、だんだんと家らしくなっていく様子を描いています。

 また、よく見ますと、てぶくろに登場する動物たちは色々な階層を代表しているようです。

 これらのことを文章は何も語っていませんが、絵が雄弁に語っています。

 このように考えますと、「てぶくろ」は、ひとつの社会を象徴しているようにも思います。みんなが力を合わせて築いたてぶくろの家は、あるべき社会を表現しているようにも見えるのです。

 絵本の絵は、文章を補足するだけでなく、発展させなければならないと、ラチョフは語っていました。

 「主人公たちの風貌や彼らが行動する状況を視覚的具体性をもって再生することは、けっして原文からの逸脱を意味しない。補足と発展-これこそ画家の主要な課題であり、それは画家の前にきわめて大きな創造の可能性をひきだすものだ」

 『てぶくろ』は、そのみごとな例です。