「カエルは空を とんでいく」-さかさ唄の面白さ
サカナがはらっぱ さんぽして
カエルは空を とんでいく
ネズミがネコを つかまえて
ネズミとりに いれちゃった
いたずらギツネの きょうだいが
マッチで海に 火をつけた
海はめらめら もえあがり
あわててクジラが とびだした
「はやくはやく しょうぼうたい!
たすけておくれ しょうぼうたい!」
・・・・・・・
チュコフスキー作、ヤールブソヴァ絵、田中潔訳『めっちゃくちゃのおおさわぎ』(偕成社)の一節です。
「サカナがはらっぱ さんぼして/カエルは空を とんでいく」というナンセンスの面白さがあります。
空をとぶことのできない「カエル」に空を飛ばせ、ネコを捕まえることのできない「ネズミ」にネコを捕まえさせ、燃え上がることのない「海」が燃え上がります。
「さかさ唄」と言いますが、それは「〈イ〉なる物に〈ロ〉なる物の機能を与えたり、その逆をおこなったりする遊び」です。
また、当然のことですが、「カエルは空を飛ばない」「ネズミはネコを捕まえない」という常識が、子どもの側にあって、はじめてこの逆転が楽しめます。
チュコフスキーは、こんなことを言っています。
「こどもが大きなものは強く、小さいものは非力であるという関係をつかみ、動物は大きければ大きいほど強いということを、はっきり知ったと仮定してみましょう。この原理が完全に明瞭になったとき、こどもはこれをもてあそぶようになります。このお遊びの内容は、直接の関係を逆の関係におきかえることにあります。つまり、大きいものに小さいものの特徴を、小さいものに大きいものの特徴を与えるのです。
チュコフスキー、樹下節訳『2歳から5歳まで』理論社-
みなさんのお子さんも、「ブタが空を飛んでいる」というようなさかさ唄を遊んでいるでしょうか。
また、絵本の文章は、リズミカルな調子で、音楽的な要素に富んでいます。ユーモアとともに、この絵本の魅力のひとつです。声にだして読んでみてください。