おんなのこの見る視点は、子どもを見る視点
「3びきのくま」は、もともとはイギリスの昔話ですが、トルストイの絵本には、ドラマチックな
体験を得られるような工夫があります。
はじめに、おんなのこの登場です。語り手は、このようにいいます。
ひとりのおんなのこが もりに あそびに いきました。おんなのこは まってしまって
かえるみちを さがしましたが、どうしても みつかりません。
語り手は、おんなのこをわきから見るようにかたり始めます。
しかし、「おんなのこは まってしまって・・・」の文は、おんなのこに寄り添っているようにも読めます。
この後は、おんなのこに寄り添い、かさなるように、語り手は語っていきます。
「のぞいてみると だれもいませんので なかへ はいりました。」の文は、
もう、ほとんど、おんなのこになっているかのようです。
このため、聞き手の子どもたちは、おんなのことともに、くまの家に入ってしまうのです。
ですから、聞き手の子どもたちを、くまの家に導くように読むのが、面白いと思います。
次に、このようになっているからです。
「このいえは 3びきのくまの いえなのです。」
読者は、この家がくまの家であることを知ってしまいました。でも、おんなのこは知りません。
人物と読者のこの関係が、この後の読みの体験をつくります。