ふるはしかずおの 絵本ブログ

絵本をちょっと身近に。

「ぼく」と「エルフィー」を見つめる温かで、多重な世界

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 『ずっーと ずっと だいすきだよ』(ハンス・ウィリアム絵と文、久山太市訳 評論社)は、「ぼく」と犬の「エルフィー」との心の交流を描いた素敵な作品です。大好きだったエルフィーの死を通して、「ぼく」の心の成長を感じ取ることができます。

 作者のウィリアムさんは、絵と文の両方をかいていますので、両者を有機的に結びつけています。「ぼくたちは、いっしょに大きくなった」という文のうらに、二人のふれあいの時間がぎっしりと詰まっていることを絵で表現しています。

 エルフィーのドッグフードを食べている「ぼく」、いっしょにおしっこするふたり、エルフィーの背中にのっている「ぼく」、誕生日のケーキのろうそくを吹き消す「ぼく」とエルフィー、バスケットの中にいるエルフィーなどが描かれていますが、それはアルバムにはられた思い出写真のようです。

 エルフィーとぼくが描いたのは、語り手の「ぼく」ではありません。つまり、ふたりを描いた人物がいます。推測ですが、作者のウィリアムさんは、ご自身のお子さんのことを描いたのではないでしょうか。水彩画の絵にとても温かいものを感じます。

 この作品は、「エルフィーのことを語るぼくの世界」が真ん中にあり、それを温かく見守る「画家の世界」、そして作者、聞き手、読者の世界が取り囲んでいます。このような三重、四重の枠組みが、この作品に奥行きや立体感を与えています。

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 そして、最後に、ぼくは、将来、ほかの犬や子ネコやキンギョを飼うことがあるだろうと想像しています。でも、「なにをかっても、まいばん きっと、いってやるんだ。『ずっーと、ずっと、だいすきだよ』って」。

 「ずっーと、ずっと、だいすきだよ」という言葉は、たとえほかの犬を飼ったとしても、「エルフィー、きみのことは忘れないよ」というぼくの深い思いです。