絵本の文脈をつくる-『ロージーのおさんぽ』
『ロージーのおさんぽ』(パット・ハッチンス、渡辺茂男訳、偕成社)は、絵でストーリーを語っています。文章は最小限のことしか語りません。
めんどりのロージーが おさんぽに おでかけ。(第1場面)
おにわを すたこら (第2場面)
首が曲がるほど草かきにぶつかるきつね。ロージーは間一髪、難を逃れますが、きつねが命を狙っていることに気がつきません。 文章はなく絵だけです。(第3場面)
おいけの まわりを ぐるり (第4場面)
水しぶきがあがり、きつねはまたも失敗。
しかし、ロージーはこの危機に気がついていません。 (第5場面)
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絵本の文章は、きつねがめんどりのロージーを狙っていることを、ひとつも語りません。絵本の絵がそれを表現していますが、3歳児や4歳児は、この2人の人物の関係(命を狙う-狙われる)がよくわかっていないときがあります。
きつねがロージーを狙っているという文脈が、文章にありませんので(したがって語られませんので)、読者は2人の関係を理解しておくことが求められています。
この文脈がつくられませんと、きつねが何度も失敗する場面を楽しむのとが出来ません。
『ロージーのおさんぽ』は、文字がすくないので、一見するとやさしい絵本のようにみえますが、3歳、4歳の子どもにはむずかしい絵本ともいえます。絵本の文脈を、読者が自分でつくらなければならないからです。
読み手は、読みかたりをはじめる前に、表紙を見せながら、人物の関係について説明し、絵本の文脈を前もってつくっておくのがよいようです。