目に見えない世界を体験する。
平山和子さんの素敵な絵本『ねっこ』(福音館書店)の紹介です。
ね(根)の働きはなんでしょう。
ね(根)は、水をすっています。水にとけた養分をすっています。
そして、ね(根)は、草や木をささえています。
庭で、花壇で、畑で、道端で、野原で、山で・・・「ねは くさを ささえています。そして、みずや ようぶんを すっています。」
平山さんの絵は、目に見えない根の世界をリアルに表現しています。
観点がしっかりとしていて、くりかえしの表現で、根の機能がわかりやすく説明されています。
圧巻は、木の根の画面です。生命感あふれる世界で、感動的です。
正しい知識、わかりやすい説明、芸術的な絵。
かがくのえほんの傑作です。
『ねっこ』は、13の画面で構成されていますが、最初と最後は、わたしたちが日頃見ている草や木の絵です。わたしたちの日常の世界です。
しかし、2画面からは、本来ならば、目に見えない地面の下の根の様子です。
見えない地面の下が、これから11画面もつづきます。読者は、「見える世界」から「見えない世界」に入りこみ、そして、もう一度「見える地上の世界」にもどってくるという絵本の体験をします。
日常の生活において、根を見たことのない子どもはいないでしょう。
しかし、体験してはいても、この絵本のようには知らなかったのです。見えない根の世界を体験することによって、読者は「根」というものに対する認識を改めることになります。
『ねっこ』の世界を体験した子どもたちは、以前とはちがった自分になっていることでしょう。 目に見える草木の下で、目に見えない根が、しっかり支え、水と養分を吸っていることを、想像の目で見ることができる子どもになっているのではないかと思います。
『ねっこ』の読者の体験は、今まで知らなかった世界を知ることの喜びです。
根の大切な役割という意味づけられた絵本の体験が、子どもを教育します。
このような素敵な絵本ですが、書店では求めることができません。図書館で探してみてください。